マイ・スウィート・ビーンズ

齋藤崇治。東大博士課程で政治学を研究しています。

留学・在外研究・出張のためにいかに外貨を準備するか 円高時外国株投資からの流用

研究者はなんだかんだ国際的な仕事である。国際学会出張やメンバーシップ、在外研究と外貨を使うタイミングは案外多い。ということで、以前外貨預入に対応したマルチマネー口座を作り、その口座に紐づいたデビットカードを作ることを勧める記事を書いた。

my-sweet-beans.hatenablog.com

簡単に振り返ると、「事前にマルチマネー口座を作って外貨を購入しデビットカードで支払えるようにすると、クレジットカードで支払うより多くの場合2%お得」ということを書いた。そして、その上で諸々のコストがお得な、SMBC信託銀行プレスティアかソニー銀行でマルチマネー口座・対応デビットカードを作ることを勧めた。

 

しかし、この方法の本質的なメリットはたかだか2%の手数料ではない。この方法を活用するベストの条件は、円高時に外貨をまとめ買いすることであるのは明らかだろう。例えば、1ドル80円でドルを買って120円の時にそのドルで支払いできれば、1ドルあたり40円分得することになる。

 

外貨預金は効率が悪い

しかし、この方法には難点がある。それは、長期間外貨預金をすることは投資効率が極めて悪いということだ。外貨預金も円預金も利子の低さは変わらず、年利0.01%に過ぎない。これはもうほぼ0であり、外貨預金で得られる利益はほぼほぼ為替差益だ。例えば、2011年7月、8月には1ドル76円をつけた。その後のアベノミクス相場を仮に知っていたとして大量にドルを買ったとしよう。そして、1ドル124円になった2015年8月にたまたま在外研究をすることとなり、その時のドルを使うことになったとしよう。これは1ドル50円あまり得することになる。年利にすると13%になる。これは本当に得なのだろうか?

 

答えはNoだ。もしここで例えばインデックス投資(VTI、楽天全米株式)をしていたならば、この間、70ドルから110ドル、1.5倍になっていたことになる。こうした投資をせずに円高だからとただ外貨を買って放置しておくことは、(勧めておいてなんだが)極めて投資効率として悪いのだ。

 

解決策:SMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスを使う

 円高時に外貨を買って円安時までにとっておきたい、その間効率的な資産運用をしたい。この強欲を実現する方法が実はある。それが、SMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスだ。

www.rakuten-sec.co.jp

前回の記事( https://my-sweet-beans.hatenablog.com/entry/2021/01/18/104902 )で書いたように、残念ながら投資手段として優れた外貨口座と外貨支払い手段として優れた外貨口座は一致しない。しかし、このサービスを使えば、投資に便利な外貨口座(楽天証券)と外貨支払いに便利な口座(SMBC信託プレスティア)との間で簡単に割安で外貨を移動できる。

 

これを使えば、楽天証券口座で円高時に外貨を購入し、外国株で資産運用した上で必要な時にプレスティア口座に移せるのだ。例えば、2011年7月に1ドル76円で当時70ドルのVTI (5320円)を買ったとしよう。そして、在外研究が始まる2015年8月(1ドル124円)に110ドルで売却できるのだ。この時110ドル用意しようと思ったら約13680円かかる。外貨預金として預けるだけなら1.6倍のところが、株式投資と組み合わせることにより2.5倍になるのである。この時にはSMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスに必要な1000円が最早無視できる額になっていることは明らかだろう。

 

なお、この目的でアメリカ株投資を行う場合は基本的にインデックス投資がベターだ。投資のための勉強に時間を費やすことを避けられる上に個別株固有のリスクを避けることができ、あくまで市場全体の旨味を得ることができるためだ。特に、VTI(楽天全米株式)は、大きく値を下げることが少ないため、かつての預金の感覚に近い。あとは好みの問題だろう。

hayatoito.github.io

 

なお、つみたてNISAはこの目的のためのものとしては避けるのが良いだろう。それは数年後に現金にすることが決まっているためだ。つみたてNISAは20年間放っておいて最大の効果が得られる。

 

また、あくまで今回の目的では、VOO(グロース企業にフォーカスしたETF)はあまり勧めることはできない。グロース株投資の宿命としてボラティリティが大きい。長期で投資するならともかく、数年以内に使う前提に立てば、下落した時のリスクが大きい。

 

外貨準備を資産運用の中に位置付ける

国内研究者にとって外貨が必要なタイミングは案外多い。とはいえ、日常の貯金や資産運用からすればその額は微々たるものである。そのため、外貨が必要になるタイミングにわざわざ備える(外貨預金)よりは、資産運用の中に外貨を取り入れてしまう方がよっぽど効率良い。すなわち、円高時に外貨を購入してそのまま株投資を行い、必要な時に必要なだけSMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスを用いて送金する方が、資産運用という観点からは効率的なのだ。無論、今回のモデルケースがアメリカの場合という留保は重要である。

 

株式投資自体は万人に勧められるものではない。別に私も研究で忙しいので大きな時間を費やしているわけではない。とはいえ、近年こうした資産運用の重要性は特に強調されている。特に国内で生計を立てていくのであればなおさらだ。

my-sweet-beans.hatenablog.com

 

今回の記事が来るべき留学・在外研究・海外出張の参考になれば幸いだ。 

 


 

 

 

2020年(2021Fall)PhD出願感想戦 ある不合格者の話

2020年末、私はアメリカPhD(政治学)に出願した。出願は今回で2回目である。前回は一校ウェイティング・リスト(補欠)には選ばれ現地にまで足を運んだものの、残念ながら最終的にrejectであった。そして今回はウェイティング・リストにもかからずあっさり終わってしまった。今は脱力感・無力感が大きい。

 

今回の記事では、2019年出願と比較して戦略を変えた部分、強化した部分について振り返りたい。そして足りなかった部分について考えたい。

 

なお、政治学分野のアメリカPhD出願については、JSQPS(計量・数理政治研究会)が定期的に説明会を行っているので、まずはそちらに参加することをオススメしたい。メーリングリストに入っていない人は今から入ろう。

sites.google.com

また、PhD留学一般のストラテジーについてはオックスフォード大に留学された向山さんがまとめているので参照されたい。

penguinist-efendi.hatenablog.com

 

2019年出願

私はそもそもPhD出願を決断した時期が極めて遅く、東大博士課程進学直前の2019年3月である。

 

2019年出願を振り返って改めて思うのは他の出願者と比べての経験不足だ。例えば、日本の大学からアメリカ博士課程留学した人たちの中には学部時代に留学し、その時点で将来のアメリカ博士課程出願を決心している人も散見される。無論、学部時点で既にTOEFLの勉強を頑張っているという点も私と比べてリードしている点であろう。

 

その上で、Statement of Purpose、Writing Sample、推薦状の準備をしなければならない。Writing Sampleのための論文の準備は、2019年4月から急ピッチで始めたものであり今から見ても穴が多かった他、推薦状のための戦略にも欠けていた。このあたりは大きな反省であり、2020年出願に向けて改善した部分である。

 

2020年出願

さてここからは2020年出願に向けた戦略を紹介したい。無論、経験不足は如何ともし難いのでそれをどう乗り越えるかという話になる。

1 Statement of Purpose

Statement of Purposeは、結局優れた研究計画か、具体的な目に見える成果をどれだけ書けるかである。不要な形容詞は全て取っ払い、成績表に掲載された成績、留学歴、RA歴など目に見える経歴を、推薦状でどのように書いてもらえるかを想定しつつ、どれだけ書けるかである。そして、それらを自分のしたい研究計画に説得的に結び付けられるかである。

 

そのため、SoP準備とはCVの見た目(中身)を充実させることでもある。これは結局推薦状を書いてもらう先生からしても推薦状を書きやすくすることにつながる。2020年出願では大きく次のことを改善した。

a 留学歴の追加

留学歴が実際にどれだけ重要なのかは私は知らない。とはいえ、アメリカPhDに留学する先輩の多くはそれが初めての留学でないことは確かである。そのためもあり、2019年出願段階で、2020年出願に向けて留学をすることは検討していた。

 

そのため、私はバークレーにVisiting Student Scholarとして留学することを2019年出願とほぼ同タイミングで決め、出願した。(詳しい経緯は以下)

 

my-sweet-beans.hatenablog.com

当然であるが、PhD留学と比べればaccpetもfunding獲得もハードルが遥かに低い。これにより経歴としてのアメリカ留学を追加することとなった。そしてこれは奨学金受給というCVに書ける経歴でもある。

 

ただし、この方法にも難点はある。バークレーで授業を受けたものの、あくまで聴講なので成績表には反映されない。また、出願タイミングが丁度最初の授業の途中のタイミングであった。そのため、現地の先生に推薦状を書いてもらうということは現実的でなかった。なので、この留学がそもそも出願にどの程度プラスだったかは疑問が残る。理想を言えばあと一年早く留学して推薦状のお願いをすればよかったのかもしれない。

 

とはいえ、このタイミングで留学し現地の授業も受けたことは、私にとって価値あるものだったと思う。また、上記投稿で紹介したが、日本で博士号を取得する分には在外研究は悪くない選択である。

 

b 国際学会での研究発表

自分にアメリカ博士課程での研究遂行能力があることを示す経歴とは何であろうか。一番は国際的な査読論文を既に出版していることであろう。しかし、政治学ではアメリカでそうした人はちらほらいるものの、それがスタンダードになっているとは到底言えない。また、難易度の高い授業でハイパフォーマンスを示すこともその一つであろうが、これはどちらかというと推薦状の問題である。

 

今回、私が採用した研究遂行能力アピールの方法の一つは国際学会での発表だ。特に、政治学では有名なAmerican Political Sciecne Association Annual Meetingでの発表だ。無論、政治学においては査読論文と学会発表は雲泥の差なので優れたサインになるとは言えないが、それでもメジャーな国際学会の中では最も倍率が高い。幸い、2019年出願直後に出したプロポーザルがAPSAに通り、夏に無事発表を終えたので経歴として追加した。

 

c 研究関心をより幅広い領域に位置付ける

当然、自分の研究テーマをブラシュアップすることも重要だ。出願するからにはその大学の誰に読んで欲しいかは考えるだろうが、当然、その先生が読むとは限らない。元々私は「政治家による官僚の統制」に興味があったが、それを比較政治経済研究として捉える書き方をした。前者がどちらかと言うとPublic Administration的関心なのに対して、後者でより広く政治学者の関心を得られるように変えた訳だ。

 

2 推薦状の戦略

推薦状については、書く側も書いてもらう側も以下のページのことは最低限知っておくべきである。

iwasakiichiro.info

推薦状が書く側にとっても極めて重要な書類であり、それ故出願選考においても重要な選考材料として役立てられているのもわかる気がする。

 

無論、いかなる人物に推薦状を書いてもらうべきかは重要なテーマであるが、誰に書いてもらえるかは、これまた難しい問題である。よく言われるのは「アメリカで有名研究者に強力な推薦状を書いてもらう」である。しかし、ここは日本なので、その中でアメリカで有名な研究者を探し、またそんな優れた人に高く評価してもらうことは、共に難しいのは明らかだろう。この辺りについては、例えばアメリカの大学で学部や修士を卒業・修了することはそのまま有利になる部分だろうなとは思う。ただし、日本にいても、この部分で努力することは可能だ。

penguinist-efendi.hatenablog.com

securitygame.hatenablog.com

また、近年では有名な先生のRA・プレドクを経由して博士課程に進学するというルートも多い(らしい)。これは日本の学生にとってどれだけアクセス可能なものなのかは分からない。

 

なので、私は過去に多くの学生のPhD出願推薦状を書いている先生にお願いするという戦略を採用した。推薦状文化は日米で大きく違い、アメリカで評価される推薦状を書くには、最低限上記サイトの知識は必須だからである。それは結局、すでに多くの推薦状を書いている先生と言うことになる。なので私はPhD留学した先輩方に誰に推薦状をお願いしたのかを聞き、その先生方にお願いした。

 

また、自分がSoPに盛り込みたい経験について知ってもらっていることも重要だろう。そのため、上記の先生方のうち、学会・研究会・ゼミで発表して自分の存在を認知してもらっている先生方にお願いした。

 

ただ、日本にいながら政治学分野で良い推薦状を得るにはどうすれば良いかはいまだよく分からない。とはいえ、既に多くの学生が今回私がお願いした先生方の推薦状を得て留学している訳で、この部分は悪い戦略ではなかったと考える。

  

2020年出願で強化できなかった部分

色々強化したつもりではあるが、奨学金に一つも引っかからなかったのは明らかな失敗であった。これに関してはもっと出すべきであったと反省している。

 

また、これは強化できなかったと言うよりは意思決定なのだが、出願先は前回より少ないU.S. News政治学ランキングトップ20の中の12校に絞った。この応募からしてタフな戦いになることは想像できた話ではある。

 

そして英語。2019年出願時はTOEFLが100-105であったが今回もこのレンジであった。より高い点数が望ましいのは間違いないであろう。

 

もしも時を戻せるとしたら?

極論、アメリカの学部に行くべきだったと思わなくもないが、それは無理筋なので措いておく。ただ、多分もっと早い時期からアメリカPhDに応募しただろう。そして奨学金をより強い覚悟で取りに行くだろう。

 

アメリカPhDに早い段階で応募するべきなのは、PhD3浪が決して珍しくないだけではない。結局、早い段階で応募するために早い段階で研究業績をあげる、英語の勉強をするといった努力は、研究者キャリアにとって確実にプラスである。それに加え、出願のパフォーマンスによっては、一部の大学からMAのオファーをされる。そして、中にはPre-PhDを明確に謳い、名門PhD輩出を掲げたプログラムもある。

 

しかし、このオファーを受けるには結局高い授業料が必要だ。また、PhDと異なり生活費の支給は期待できない。そのため、MAでこそ奨学金が必須となる。(学費の高いアメリカのMAがPhD予備校と化すのは高等教育のアクセスとして問題があると思うが)そのため、奨学金を狙った上でMAを次善の策にするのが若い人の戦略として良いであろう。

 

しかし、MAのオファーですらも当然選抜があるので、結局もっと若いうちから研究に励むべきだったというどうしようもないifになる。政治学の中でも特に計算社会科学や行動計量学的な分野では学部生から学会発表をするのは珍しくない。そういう人であれば、MAを経由したPhDも十分狙えるであろう。ただ、学部生からこうした業績をあげるのは本人の能力も重要ではあるが、環境がより重要だ。もしも、自分がそういう環境にいないのなら、まずそのような環境を探すのが良いのかもしれない。

 

最後に

念のために記すと別にこの記事はアクセプトを得られなかったことへの呪詛ではない。あるいは「こんなに頑張ったのに」という言い訳ではない。結局、今年強化した部分、留学、国際学会はいずれも弱かったということになる。留学を一年早めてそこで推薦状を得ていたらよかったのかもしれないが、それによってアクセプトに至るのかは定かではない。あるいは今取り組んでいる論文を既に出版していたら良かったのかもしれない。2020年出願というタイミングもあろう。とはいえ、若干の授業料免除付きでMAのオファーはあったので概ね間違いではなかったのだと思う。

 

分野は違えど、研究一般、留学戦略のいずれにおいても高みを目指して一生懸命頑張っている方々がしっかりアクセプトされる印象だ。

MIT五十嵐さんのブログ(Computer Science)

アメリカ博士課程留学 − 立志編 - 旅する情報系大学院生

メリーランド大立石さんの寄稿(経済学)

https://www.funaifoundation.jp/scholarship/202007tateishiyasuka.pdf

 

総じて言えば学部生の頃からの研鑽という点で彼らに負けているし、またたった2度の全敗で出願から撤退するというのも執着が足りないのかもしれない。出願戦略設定の「ミス」もあるだろう。特に、PhD留学への執着は、アクセプトのために必須であるように思う。そして執着の重要性を考えると、既に挙げたように早いうちから留学を計画し準備することもまた重要であろう。見事アクセプトされた方々に学部で交換留学をした人たちが多く見えるのはこの部分が大きいのだと思う。

 

とは言え、時間は巻き戻せず有限であり、PhD留学するならするからには得たいものというのは当然ある。私の場合は、PhD留学そのものには拘泥せず東大で博士号を取得することも十分想定していた。また、3回目の挑戦、5回目の挑戦でアクセプトされるのかもしれないが、その価値は私にとっては大きくなかった。(繰り返しゲームにおける割引因子である。)そういう観点からの今回の戦略なのであり、今回の結果である。どこに出願するか、何度挑戦するかという感覚はその人のものによるので、あくまで私の場合の話である。

 

さて私はこれから博士論文の完成を目指すことになる。しばらく凹むだろうが、場所は違えど世界の知への貢献に向けて精進するつもりだ。当然、学問に場所は関係ない。

 

一方で、今後アメリカPhD挑戦を目指す方は何かの参考になれば幸いだ。成功を祈ってる。

 

 

読書感想 『驚くほどシンプルで一生使える投資の極意』

最近、金融投資ブームに乗っかって株式投資を始めた。

 

なぜわざわざ「金融」「株式」とつけたかといえば、この本の影響である。

www.amazon.co.jp

この本は、金融投資のテクニックではなく、もっと広い社会人の心構えをとくタイプの本だ。まず私たちは「健康で働き続けられる」限り、生涯年収分の価値(「人的資産」)があると考えるところから始まる。そして、株などの金融資産それとセットで考えられる。当然ではあるが、20代にとって多くの場合、人的資産が金融資産を遥かに上回る。そのため、人的資産への投資=勉強etcが最も重要であると説明する。単純に、同じ1000万円生み出すのに、1億円以上あるであろう人的資産への投資と、n万円に過ぎない金融資産への投資のどちらが簡単かという話だ。そして、「健康でい続けること」の重要性もその観点から説明される。たとえ過労によって金融資産が少し増えたとしても、それ以上に人的資産が減るのだと理解した。

www.cnn.co.jp

 

そして、以上の勉強=自己投資という観点から、金融資産の運用も説明される。この本でいう金融資産とは、自分自身という人的資産との合計のうちごく僅かな部分を占めるに過ぎないものだ。その際、まず人的資産の立ち位置を考えることを求める。私の場合は、日本で将来就職する予定なので、よくも悪くも日本の成長・衰退に身を委ねるということになる。そのバランスを取るのが金融資産である。そのため、日本が衰退してもある程度は大丈夫なように金融資産の投資先を考えようというのがこの本のメッセージだ。(詳しくは本を読んでください)

 

勉強=自己投資自体は前々から考えていたつもりから、それと自分の健康、金融資産の投資まで結びつけて考えるのは私にとっては新鮮で読んでよかったと思う。

 

博士課程学生は人的資産投資100%?

さて、この本を読んで思ったのが、博士課程学生の性質である。この本の概念を用いてざっくりと言えば、我々は人的資産投資=勉強(研究)に全振りした人たちという理解になる。無論、金銭的な価値という点からすれば将来ペイするかどうかというのは極めて大きな問題なので、私がこのようなことをいうのはどこかおかしいことなのかもしれない。とは言え、最近は社会科学でも博士課程出身の人が活躍するフィールドは増えているので、仮にアカデミアに残らないとしても、今培っているスキルはどこかで役に立てられるかもしれない。この辺は割と私は楽観的だ。なので頑張って勉強・研究を続けようと思う。

 

そして、最近SNSでも賑やかな「研究テーマをどう設定するか」という問題にも思い至った。ある研究をするということは、その領域で人的資産に投資するということであり、そのテーマの栄枯盛衰に身を委ねるということでもある。かつてポスドクが政策的に推進された一部の分野がどのような結末を迎えているかは言うまでもない。研究分野に関してヘッジを効かせることは可能なのであろうか?とは言えこの辺はまだ考えがまだまとまってないのでここで止める。

 

金融資産投資はどのように行うか

博士課程学生は、身分の不安定さという問題の他に(「就職」によってしか解決しないので考えない)2つのリスクを持っている。それは、国のリスクと、研究テーマのリスクである。私の場合は将来日本で働き、日米の政治を対象とした研究をとりあえずは進める予定だ。そのため、日本のリスクとアメリカのリスクを自分の人生に内在化させることになる。とはいえ、メインのリスクは日本で働くことによるものであろう。

 

そのため、金融資産投資は日本のリスクをなるべく避けるというのが基本的な線になるのだろう。もしかしたら将来、アメリカに対してもリスクを避けることを考える時代がくるのかもしれないが。

 

 

国際査読誌掲載への道 随時追記

現在私は、取り組んでいる論文 "Supervision among Agencies for the President" を国際査読誌に通すべく改稿している。

sites.google.com


何かの参考になることを期待して、スケジューリングを記したい。既にたくさん言われていることだが、思った以上に時間かかる。。。

 

2019/8/9 研究スタート

2020/1/4 JSQPSで元ネタの発表

2020/5/27 AOPSSSでの発表。初めてアメリ大統領制研究者からコメントをもらう

コメントをもとに改訂

2020/6/16 雑誌1に投稿

2020/7/20 リジェクト

コメントを踏まえて改稿

2020/9/25 雑誌2に投稿

2020/10/2 デスクリジェクト

2020/10/20 雑誌3に投稿

2020/10/23 デスクリジェクト

2020/11/5 雑誌4に投稿

2020/12/8 リジェクト (ヴァリデーション、事例研究など)

2020/12/14 ゼミ発表。ヴァリデーション、事例研究をめぐり示唆を得る

2020/12/16 先生に相談。ヴァリデーションの大体の方向性を掴む

現在 コメントを踏まえて改稿中

 

アメリカでの野菜ジュース選び

一人暮らしでの難題はいかにバランスよく栄養を摂取するかである。それが特に問題となるのは野菜だ。野菜は日持ちが短く、なかなか一人で幅広い栄養を摂取することは難しい。

 

そのため、日本にいる時から野菜ジュースに頼ってきた。日本にいる時は、「野菜一日これ一本」や「一日分の野菜」といった極めて分かりやすい野菜ジュースがあり、私はそれらを愛用していた。

 

無論、アメリカで、それら日本の野菜ジュースを手に入れるのは困難だ。ということで、現在、その代替品として重宝しているのが、V8 Low Sodiumである。

www.amazon.com

Low Sodiumが丁度良いというのがいかにもアメリカらしいというのはさておき、これの栄養成分は非常に優れている。食物繊維、ビタミンA、ビタミンC、鉄をバランスよく含んでいる。加えてamazon.comで24本15.92ドルと極めてリーズナブルである。

 

より良いものがないかは随時検証を続けていきたい。

 

留学としての在外研究(2021/1/22更新)

博士課程における「留学」の場合、最近はPhD留学のことを指す場合が増えている。しかし、最終的に日本で博士号を取得する場合でも、「留学」は可能であるし、これまでも多くの日本の博士課程生が「留学」してきた。これは、学位を伴うものでなければ通常「在外研究」「交換プログラム」として行われる。しかし、これらの概念の違いは実際には曖昧だ。私は、「交換プログラム」の名目で在外研究しているしているようなものだし、そして現地の授業も聴講させてもらっている。「留学」「在外研究」「交換プログラム」、いずれの呼び名にせよ、私は今回の留学で複合的にメリットを享受している。

 

私自身は今現在PhDにも出願をしている。そのため、今回の在外研究は希望としてはその前段階という位置付けになっている。しかし、仮に博士号を日本を取るにしても博士課程中の在外研究は十分アリだと思っている。無論、在外研究としての留学にもデメリットがあるので、その点も含めて考えたい。なお、今回はコロナについてはあまり考えない。

 

在外研究留学の始まり

現在(2021/1 ~ 4)、私はアメリカで在外研究を行っている。専門がアメリカ政治であり、指導教員の先生から「アメリカ政治をやるなら早めにアメリカに行った方が良い」という指導を受けた。ということで、アメリカに滞在しつつ現地の先生に指導・アドバイスを受けるということを目標に、在外研究留学を検討した。

 

そこで見つけたのが、東京大学の交換プログラムである。指導を受けたい先生が明確にいてその人とコネクションがあるのなら自分で留学先を見つけても良いだろうが、今回私にはそのようなコネクションはなかった。そのため、このプログラムを利用し、バークレー校への留学に応募して留学の切符を獲得した。手続き上、私はバークレー校の「客員研究員」として現地に留学した。(この響き、好きである。)学内留学の類は学部生の頃から幾つか応募していたが、実はこれが初めての交換留学である。学内留学がとにかく狭き門なのに比べると、博士課程の在外研究留学はまだ通り易いように思える。

 

まずは、在外研究留学のメリットを紹介したい

 

在外研究留学のメリット1: 現地の授業を受けられる

今回の留学において、私は幸いバークレー校の授業を聴講している。私は客員研究員でバークレーの正規の学生ではないので、授業を履修することは当然できない。また、聴講も完全に先生方のご好意であり、「聴講できただけラッキー」という程度である。とりあえず私の取れる手は、先方にメールを送って許可をもらうことだけである。中には結局連絡が取れないで授業も受けられなかった先生もいた。また、どうしても受けたい先生については8回くらいメールを送って、2回目の授業から参加という場合もあった。人生、諦めたら試合終了である。

 

当然単位にはならないものの、政治学が盛んなアメリカのトップ校で大学院の授業を受けられることはやはりそれ自体が刺激である。これ幸いと、自分にとって馴染みの薄い手法や苦手(だけど研究に必要な)領域の勉強をしている。授業についてはまた筆を改めて書きたい。

 

在外研究留学のメリット2: 現地の学会・研究会への参加

各大学はうちうちに研究会を開催し、そこで初期段階のワーキングペーパーを披露しあっている。また、最近ではオンライン研究会の普及により、大学間の研究会も活発に行われるようになっている。先方にメールしたことにより、幾つかそうした研究会に潜ることができた。その場では、頻繁にビッグネームの発表と質疑応答を聞くことができ、非常に勉強になった。

 

この点についてはやはり当たり前にそのメリットを享受できるPhD学生が羨しく思う。しかし、コロナ禍がもたらす一つの福音は、オンライン化によってこうした研究会に日本から潜りやすくなったことであろう。実際、大学間研究会については帰国後も参加するつもりだ。ゆくゆくは発表もしたい。

 

ネットワークというほどのものかは分からないが、こうして得た研究会という足掛かりは、今後の研究活動にとって案外鍵になる気がしている。

 

一方で、幾つか欠点もある。

在外研究留学の欠点1:博士号取得の遅れ

最近文系においても博士号を3年で取得するケースが増えている。その最大の転機は、学振PDが文字通りポスドクにしか認められなくなったことだと私は考えている。つまり、博士課程に4年以上いる場合、財政的にそれを支えてくれるチャンスがほとんどなくなってしまった。

 

ここに在外研究留学の最大の欠点があると考える。すなわち、在外研究を博士課程ですることは、博士号取得時期という点からは多くの場合マイナスである。そして在外研究をしたからといって博士課程4年目を財政的に支えてくれる機関はない。周りの話を聞く限り、3年という期間で博士論文を書き上げるには脇目を振っている時間なんてないというのが実情だ。こういう点から考えれば、在外研究留学は博士課程中はあまり勧められた話ではない。

 

しかし、在外研究は視野を広げるチャンスであることは言うまでもない。個人的には、学振DC1の支給期間が3年から4年に伸びてくれれば、在外研究留学する人も増えると思うのだが。。。

 

在外研究留学の欠点2: ファンディング獲得の必要性

PhD留学の最も優れた点の一つはファンディングである。多くのPhD留学志望者が考えるアメリカでは、ティーチングの負担があるとはいえ、PhD在学中の5年間は多くの場合給料をもらえる。

 

それに比べれば客員研究員は「お客様」である。今回、バークレーで客員研究員をするにあたり、トータルで10万円ほどのフィーを支払った。もちろん、給料は存在しない。また、現地での生活費(家賃含む)を賄う手段を考えなければならない。例えば、今回私はカリフォルニア州バークレー市の隣のアルバニー市に居を構えたが、そこの家賃は月1500ドル(光熱費込み)だった。勉強・研究くらいしかすることもないのでその他の食費・日用品費は月600ドルで、計2100ドルの出費である。アルバニーの住居事情故であるが、これは学振DC1の月支給額を超えている。

 

とはいえ、この点はそこまで大きな問題とはならないと考える。まず、学振DC1等に通っていれば、科研費から日当が支出可能である。加えて、日本学術振興会は、若手研究者海外挑戦プログラムを実施している。それに通ると現地での生活費相当額をもらえるが、これは学振DC1・DC2と併給が可能だ。在外研究留学の不人気故か、倍率も低めである。(そして、何故かあまり知られていない)

www.jsps.go.jp

 

他にも、諸財団がPhD留学のみならず在外研究留学にも助成を出しているので確認してほしい。

 

このように、PhD留学にかかる奨学金などと比べると恐らくファンディング獲得の難易度は低い。ファンディング獲得のチャンスを待って在外研究を始めると言うのが賢明であろう。

 

在外研究留学の欠点3: 全てはあなた次第

在外研究留学の大きな問題は、向こうから手を進んで出してくれるということはまるで期待できないということだ。無論、博士課程だろうとPhDだろうと、研究者キャリアは自分でどうにかしなければならない程度は大きい。しかし、在外研究留学のファンディングや授業、指導、ネットワーキングの類は、全てどれだけアグレッシブになれるかによる。アグレッシブさの必要性は博士課程・PhD以上であり、向き不向きはあるだろう。ただ話を聞く感じポスドク期の方がその程度は強い気がするので、私はその予行練習として捉えたい。

 

偉そうに書いているが、別に私も上手くいってる訳ではない。当初から懸念していたことではあるが、今回の留学では、コロナ禍というのもありネットワーキングがなかなか困難なように思う。これに関しては、ポスドク以降で再チャレンジしたい。

 

まとめ:在外研究留学でも意外と(頑張れば)メリットを享受できる

在外研究留学でも意外と(頑張れば)メリットを享受できる、これに尽きると思う。無論、中にはPhD留学した方がより大きく利益を得られるものも多い。とはいえ、最終的にどこで博士号を取るかは極めて属人的なことである。最終的に日本で博士号を取る人にも、在外研究留学は是非とも考えてみてほしい。

 

ただ、政策的問題として、D4でももらえる奨学金は一層拡充してほしいと思う。チャレンジを求める政策立案者の意思は立派ではあるが、現実問題としてある程度の確実性がなければチャレンジはできない。そこでチャレンジするのはただの博打である。

 

2020年振り返り

2020年は博士課程2年目であった。博士課程で行う研究が進む時期であり、博士課程の研究成果が出始める時期である。

 

しかし、コロナ禍である。私にとっても初の国際学会発表のための渡航キャンセルや、初の在外研究の縮小など影響は大きかった。とはいえ、博論に必要なデータセットは既にあり、在宅研究に移行できたのは不幸中の幸いであった。

 

そして何よりの収穫は、AOPSSS – Asian Online Political Science Seminar Series で発表できたことであった。2020年はオンライン学会が一気に隆盛し、それまで会う機会がなかったであろう研究者に会うことができ、また自分の研究を知ってもらうことができた。私は現在日本でアメリカ政治を研究しているため、日本にいながらアメリカの研究者にコメントをもらえるのは、とても価値あることだと思う。また、オンライン学会は交通費が要らないということも大きい。この中で知り合った先生には今でもお世話になっている。この機会を提供してくれた先生方に感謝したい。

 

ここで得たコメントを元に、2020年は4回研究を査読誌に投稿した。しかし、いずれもrejectであった。とはいえ、うち2回はreviewがついていたので、それを元に現在も論文の修正作業を進めている。結局、自分の論文を一番真剣に読んでくれるのは査読者なので、彼らに勉強させてもらっているという感が強い。

 

また、オンライン学会ブームのおかげで、アメリカ大統領研究者の研究会に潜っている。日本からでも参加できるのは本当に幸いで、ゆくゆくは発表もしたいものだ。

 

また、人生で初めて自分の論文が引用された。その論文もまだ研究会報告であったが、まずは引用されたというのが本当に嬉しい。まだ一本も査読に通せてないが、コンスタントに出して引用されるようになりたいものだ。 

 

2021年どうするかについてはPhD出願の結果が出てからまた考えたい。