マイ・スウィート・ビーンズ

齋藤崇治。東大博士課程で政治学を研究しています。

読書感想 『驚くほどシンプルで一生使える投資の極意』

最近、金融投資ブームに乗っかって株式投資を始めた。

 

なぜわざわざ「金融」「株式」とつけたかといえば、この本の影響である。

www.amazon.co.jp

この本は、金融投資のテクニックではなく、もっと広い社会人の心構えをとくタイプの本だ。まず私たちは「健康で働き続けられる」限り、生涯年収分の価値(「人的資産」)があると考えるところから始まる。そして、株などの金融資産それとセットで考えられる。当然ではあるが、20代にとって多くの場合、人的資産が金融資産を遥かに上回る。そのため、人的資産への投資=勉強etcが最も重要であると説明する。単純に、同じ1000万円生み出すのに、1億円以上あるであろう人的資産への投資と、n万円に過ぎない金融資産への投資のどちらが簡単かという話だ。そして、「健康でい続けること」の重要性もその観点から説明される。たとえ過労によって金融資産が少し増えたとしても、それ以上に人的資産が減るのだと理解した。

www.cnn.co.jp

 

そして、以上の勉強=自己投資という観点から、金融資産の運用も説明される。この本でいう金融資産とは、自分自身という人的資産との合計のうちごく僅かな部分を占めるに過ぎないものだ。その際、まず人的資産の立ち位置を考えることを求める。私の場合は、日本で将来就職する予定なので、よくも悪くも日本の成長・衰退に身を委ねるということになる。そのバランスを取るのが金融資産である。そのため、日本が衰退してもある程度は大丈夫なように金融資産の投資先を考えようというのがこの本のメッセージだ。(詳しくは本を読んでください)

 

勉強=自己投資自体は前々から考えていたつもりから、それと自分の健康、金融資産の投資まで結びつけて考えるのは私にとっては新鮮で読んでよかったと思う。

 

博士課程学生は人的資産投資100%?

さて、この本を読んで思ったのが、博士課程学生の性質である。この本の概念を用いてざっくりと言えば、我々は人的資産投資=勉強(研究)に全振りした人たちという理解になる。無論、金銭的な価値という点からすれば将来ペイするかどうかというのは極めて大きな問題なので、私がこのようなことをいうのはどこかおかしいことなのかもしれない。とは言え、最近は社会科学でも博士課程出身の人が活躍するフィールドは増えているので、仮にアカデミアに残らないとしても、今培っているスキルはどこかで役に立てられるかもしれない。この辺は割と私は楽観的だ。なので頑張って勉強・研究を続けようと思う。

 

そして、最近SNSでも賑やかな「研究テーマをどう設定するか」という問題にも思い至った。ある研究をするということは、その領域で人的資産に投資するということであり、そのテーマの栄枯盛衰に身を委ねるということでもある。かつてポスドクが政策的に推進された一部の分野がどのような結末を迎えているかは言うまでもない。研究分野に関してヘッジを効かせることは可能なのであろうか?とは言えこの辺はまだ考えがまだまとまってないのでここで止める。

 

金融資産投資はどのように行うか

博士課程学生は、身分の不安定さという問題の他に(「就職」によってしか解決しないので考えない)2つのリスクを持っている。それは、国のリスクと、研究テーマのリスクである。私の場合は将来日本で働き、日米の政治を対象とした研究をとりあえずは進める予定だ。そのため、日本のリスクとアメリカのリスクを自分の人生に内在化させることになる。とはいえ、メインのリスクは日本で働くことによるものであろう。

 

そのため、金融資産投資は日本のリスクをなるべく避けるというのが基本的な線になるのだろう。もしかしたら将来、アメリカに対してもリスクを避けることを考える時代がくるのかもしれないが。