マイ・スウィート・ビーンズ

齋藤崇治。東大博士課程で政治学を研究しています。

留学・在外研究・出張のためにいかに外貨を準備するか 円高時外国株投資からの流用

研究者はなんだかんだ国際的な仕事である。国際学会出張やメンバーシップ、在外研究と外貨を使うタイミングは案外多い。ということで、以前外貨預入に対応したマルチマネー口座を作り、その口座に紐づいたデビットカードを作ることを勧める記事を書いた。

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簡単に振り返ると、「事前にマルチマネー口座を作って外貨を購入しデビットカードで支払えるようにすると、クレジットカードで支払うより多くの場合2%お得」ということを書いた。そして、その上で諸々のコストがお得な、SMBC信託銀行プレスティアかソニー銀行でマルチマネー口座・対応デビットカードを作ることを勧めた。

 

しかし、この方法の本質的なメリットはたかだか2%の手数料ではない。この方法を活用するベストの条件は、円高時に外貨をまとめ買いすることであるのは明らかだろう。例えば、1ドル80円でドルを買って120円の時にそのドルで支払いできれば、1ドルあたり40円分得することになる。

 

外貨預金は効率が悪い

しかし、この方法には難点がある。それは、長期間外貨預金をすることは投資効率が極めて悪いということだ。外貨預金も円預金も利子の低さは変わらず、年利0.01%に過ぎない。これはもうほぼ0であり、外貨預金で得られる利益はほぼほぼ為替差益だ。例えば、2011年7月、8月には1ドル76円をつけた。その後のアベノミクス相場を仮に知っていたとして大量にドルを買ったとしよう。そして、1ドル124円になった2015年8月にたまたま在外研究をすることとなり、その時のドルを使うことになったとしよう。これは1ドル50円あまり得することになる。年利にすると13%になる。これは本当に得なのだろうか?

 

答えはNoだ。もしここで例えばインデックス投資(VTI、楽天全米株式)をしていたならば、この間、70ドルから110ドル、1.5倍になっていたことになる。こうした投資をせずに円高だからとただ外貨を買って放置しておくことは、(勧めておいてなんだが)極めて投資効率として悪いのだ。

 

解決策:SMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスを使う

 円高時に外貨を買って円安時までにとっておきたい、その間効率的な資産運用をしたい。この強欲を実現する方法が実はある。それが、SMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスだ。 

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前回の記事( https://my-sweet-beans.hatenablog.com/entry/2021/01/18/104902 )で書いたように、残念ながら投資手段として優れた外貨口座と外貨支払い手段として優れた外貨口座は一致しない。しかし、このサービスを使えば、投資に便利な外貨口座(楽天証券)と外貨支払いに便利な口座(SMBC信託プレスティア)との間で簡単に割安で外貨を移動できる。

 

これを使えば、楽天証券口座で円高時に外貨を購入し、外国株で資産運用した上で必要な時にプレスティア口座に移せるのだ。例えば、2011年7月に1ドル76円で当時70ドルのVTI (5320円)を買ったとしよう。そして、在外研究が始まる2015年8月(1ドル124円)に110ドルで売却できるのだ。この時110ドル用意しようと思ったら約13680円かかる。外貨預金として預けるだけなら1.6倍のところが、株式投資と組み合わせることにより2.5倍になるのである。この時にはSMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスに必要な1000円が最早無視できる額になっていることは明らかだろう。

 

なお、この目的でアメリカ株投資を行う場合は基本的にインデックス投資がベターだ。投資のための勉強に時間を費やすことを避けられる上に個別株固有のリスクを避けることができ、あくまで市場全体の旨味を得ることができるためだ。特に、VTI(楽天全米株式)は、大きく値を下げることが少ないため、かつての預金の感覚に近い。あとは好みの問題だろう。

hayatoito.github.io

 

なお、つみたてNISAはこの目的のためのものとしては避けるのが良いだろう。それは数年後に現金にすることが決まっているためだ。つみたてNISAは20年間放っておいて最大の効果が得られる。

 

また、あくまで今回の目的では、VOO(グロース企業にフォーカスしたETF)はあまり勧めることはできない。グロース株投資の宿命としてボラティリティが大きい。長期で投資するならともかく、数年以内に使う前提に立てば、下落した時のリスクが大きい。

 

外貨準備を資産運用の中に位置付ける

国内研究者にとって外貨が必要なタイミングは案外多い。とはいえ、日常の貯金や資産運用からすればその額は微々たるものである。そのため、外貨が必要になるタイミングにわざわざ備える(外貨預金)よりは、資産運用の中に外貨を取り入れてしまう方がよっぽど効率良い。すなわち、円高時に外貨を購入してそのまま株投資を行い、必要な時に必要なだけSMBC信託銀行楽天証券外貨送金サービスを用いて送金する方が、資産運用という観点からは効率的なのだ。無論、今回のモデルケースがアメリカの場合という留保は重要である。

 

株式投資自体は万人に勧められるものではない。別に私も研究で忙しいので大きな時間を費やしているわけではない。とはいえ、近年こうした資産運用の重要性は特に強調されている。特に国内で生計を立てていくのであればなおさらだ。

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今回の記事が来るべき留学・在外研究・海外出張の参考になれば幸いだ。